2010年7月25日日曜日

吉行和子著「ひとり語りー女優というものはー」(文藝春秋刊)

吉行さんはエッセイスト・クラブ賞をとられたことがあるように、出版されれば直ぐに手にとってみたい書き手のひとりである。
吉行さんそのものが実におもしろい人だと、テレビ番組や映画やテレビドラマから垣間見ているので、今回の女優としての半生記を一気に読ませて貰った。
31篇のエッセイからなっているが、それぞれのエッセイの締めくくりの言葉が吉行さんならではのユニークなもの。
登場人物、母あぐり、吉行淳之介、宇野重吉、杉村春子、寺山修司、大江健三郎らと吉行さんとの関係性が、その人との会話と会話の様子、言葉で見えてくるのがなんともおもしろい!
228ページに「1993年、この年から『MITSUKO−ミツコ世紀末の伯爵夫人』という一人舞台をはじめる。神戸の演劇プロデューサーが企画して、一人舞台大会を開くので『小間使の日記』で参加してくれ、との申し込みがあった。でも、私はどうせなら、日本人の役をしたいと思った。実在の人物、日本だけに留まらず海外にも行った人、そして今まで舞台や映画で描かれていない人物にしたい。演出家の大間知靖子さんと相談し、彼女が『クーデンホーフ光子伝』という分厚い本を見つけてくれた。これを芝居にして参加することにした。まさかその後、十三年間も続けるとは思ってもみなかった。」とある。演出プロデューサーと書かれているのはぼくで、前年5月に第1回を開催して翌年の企画を持ち込み、渋谷でお二人に会っていただいたもので、プロデューサーとは言えない駆け出しであった。事情を知らないぼくがお願いしたのはNHKTVでみた『蛍』の再演であったが「あれはテレビだからできたもの。」と吉行さんに言われ、大間知さんが「去年だったら芥川の百年でなにかできたわのにね。とにかくなにか考えてみましょう。」と言って下さって始まった舞
台だった。(1500円)