2010年6月20日日曜日

ゲルバーのベートーべン協奏曲全曲演奏会(芸文センター大ホール)

6月18日(第1番と第5番)19日(第2番、第3番と第4番)の両日、あのゲルバーの演奏を聴ける喜びと期待を胸に出かけた席がなんと前から2列目の真ん中!指揮者大山の足の動きだけがピアノの向こうに見える。代わりにゲルバーの霜焼けでふくれたような、指先だけが細い驚異の10本の指が目の前に見える!
2日間5曲演奏を聴いた結論の第一は、若いPACオーケストラの目に見える演奏の深化、充実である。初日は緊張感に欠けた硬さだけが目立ったが、二日目は音も良く鳴って見違える演奏になった(管楽器が弱いのはいたしかたなし)。この成長ぶりは明らかにゲルバーとの本番演奏効果だ。
ゲルバーの演奏では、最後に演奏した第4番が圧巻だった。華麗な第5番「皇帝」にはない繊細な曲を、ゲルバーは交響曲第5番「運命」の運命の扉を叩く力強いタッチと感情移入された繊細なタッチとで説得力十分な独自の4番を聴かせてくれた。
ほとんど演奏されない第1番、第2番が聴けたことも有難かったが、巨匠の個性あふるるエネルギーがPACを新たな域に到達させる時に出会えた幸せな2日間であった。(兵庫県芸術文化センター大ホール)
中島淳