2010年5月17日月曜日

マルセ太郎の芸について

 「精選 春の語り芸2007」(主催『上方芸能』編集部 3月3日そごう劇場)のプログラムに、『上方芸能』誌代表の木津川計さんが
<「一人語り」への呼びかけ>という文を書かれています。
 その中でマルセ太郎の芸について述べておられます。木津川さんのお許しを得てその個所を引用させていただき、マルセ太郎の芸
を知らない方が5月23日12時からの「スクリーンのない映画館・泥の河」(DVD上映)を観に来ていただく一助にしていただけたら、と
思うのです。
 
 「(前略)私は六年前に亡くなったマルセ太郎を思い出しているのです。彼は映画を語りで再現しながら、俳優、演出家を称えました。
類似の作品と比べたり、独自の解釈を加えて映画以上に見ごたえ、聴きごたえのある´映画再現芸´を打ち立てたのです。マルセ太郎
の「泥の河」「生きる」「殺陣師段平物語」「天井桟敷の人々」などは、語りと演技と解釈を交えた新たな表現形式だったのです。
 マルセ太郎没後六年、いまだに彼の表現形式を継ぐ人は出てきません。(中略)
 私はマルセ太郎の形式を「一人語り」と呼んでいます。すると、朗読、語り、一人語りの区別はもう説明するまでもありません。もう一つ
一人芝居がありますが、これは一人で演じる芝居であって「一人語り」とは別の形式です。
 語りも含む朗読家から第二第三のマルセ太郎が生まれてきたら、語りの表現はさらに面白みを増すことでしょう。作品は文学、映画、舞
台劇、アニメ、なんでもいいのです。豊穣の「一人語り」のための呼びかけといたします。」

 木津川計さんはこの直後に「木津川計の一人語り劇場」を始められました。2007年は新国劇の「瞼の母」「一本刀土俵入」、2008年は
新派劇「金色夜叉」「婦系図」、2009年は新国劇「王将」、そして今年は映画「無法松の一生」を語られました。今年の「無法松の一生」は
神戸芝居カーニバルで催したいと考えるほど素晴らしかったことのみ記して、別の機会に触れたいと思います。中島淳